同性愛に不貞は存在しないのか
従前、「性交」とは、男女間のものを想定していました。
しかしそうすると、例えば女性同士の性的行為は、挿入を伴わないので不貞行為に当たらないのではないか。このことが、裁判所内で真面目に議論されました。
これについて東京地方裁判所平成16年4月7日判決は、「日本国民法770条1項1号にいう『不貞』とは,性別の異なる相手方と性的関係を持つことだけではなく,性別の同じ相手方と性的関係を持つことも含まれるというべきであるから,被告の行為は,夫である原告との関係では,上記『不貞』に該当するというべきである。したがって,被告は,原告に対して,同法709条に定める不法行為として,損害賠償を支払う義務を負うというべきである。」としました。
また東京地方裁判所令和3年2月16日判決は「不貞行為とは,端的には配偶者以外の者と性的関係を結ぶことであるが,これに限らず,婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する蓋然性のある行為と解するのが相当であり,必ずしも,性行為(陰茎の挿入行為)の存在が不可欠であるとは解されず,夫婦共同生活を破壊し得るような性行為類似行為が存在すれば,これに該当するものと解するのが相当である。そして,同性同士の間で性行為あるいはその類似行為が行われた結果として,既存の夫婦共同生活が離婚の危機にさらされたり,離婚に至らないまでも形骸化するなど,婚姻共同生活の平穏が害される事態もまた想定されるところである。」としました。
性行為のみならず性行為に類似する行為も「不貞行為」に含まれるということはこれまでも指摘されてきたことですが、常に、「どこからが不貞か」は、ネット上でも盛んに話題に上っているようですね。